2020

株式会社あ印の営業グループ部長 葛貫賢治さんの写真

「中小企業総合展 in FOODEX」
出展企業:成功事例
#007
インドネシア産タコを業界のスタンダードへ。
海産物一筋130余年の加工会社が
公的サポートの活用によって
原料調達ルート&市場の開拓に成功。
【株式会社あ印】茨城

「あ印」の出展事例に学ぶこと

JR常磐線の勝田駅から、国営ひたち海浜公園などの観光名所をつなぐ“ひたちなか海浜鉄道”湊線で20分ほどの殿山駅界隈は、タコやイカをはじめとする水産物加工業が盛んな海辺の町。今回訪問した“株式会社あ印(茨城県ひたちなか市)”は、2017年から3年連続で中小企業総合展 in FOODEXに出展し、日本で初めてインドネシア産タコの本格輸入や製品化に成功した水産物加工会社である。

インドネシアでの原料調達ルートの構築&直輸入を実現し、タコ加工の新たな可能性を拓いてきた営業グループ部長の葛貫賢治さんに、中小企業総合展出展の経緯とその成果について話を聞いた。

量販から外食産業まで幅広い市場開拓のチャンスがある
FOODEX JAPANの魅力。

日本における輸入タコといえば、数年前までアフリカ産がほとんどを占めていた。20年ほど前は日本の年間輸入量は10万tあったが、世界中でタコが食されるようになったことで、原料高騰によるタコ離れが起こり輸入量は3万tまで落ち込んでしまったという。業界全体が伸び悩むそんな状況下、2017年の中小企業総合展 in FOODEXで彗星のごとく登場したのが、あ印によるインドネシア産タコだった。

「食品業界ではさまざまな展示会がありますが、中でもFOODEX JAPANは来場者数が約8万人と非常に多く、バイヤーのジャンルが幅広いことが最大の特徴だと思います。ですから、アフリカ産タコにひけをとらないインドネシア産タコを日本市場に初めて打って出るには格好の場だと考えました。タコ加工品の卸先はこれまでスーパーマーケットや問屋など流通系がメインでしたが、FOODEX JAPANへの出展によってホテルや飲食店、総菜店をはじめととする外食産業へ販路が一挙に広がりました。和洋中どれにも使えて調理法も多岐にわたるタコは食材としての汎用性が高くまだまだ可能性を感じています」と葛貫さん。

インドネシア産タコとタコ加工品の写真

「FOODEX JAPANの中でも中小企業総合展の枠で出展するメリットは、何もコストパフォーマンスだけではありません。単独で出展するとなると、申請手続きをはじめ、ブースの設計や試食品や商品の準備などの事前準備から、当日のブース設営や人員の手配などにいたるまで準備が非常に煩雑なんですよ。人員も限られる中、普段の仕事をこなしながら準備を進めるのは至難の技ですから、出展にまつわる段取りを中小機構さんにバックアップしてもらえる中小企業総合展は、我々のような中小企業にとって大変ありがたいですね。今回もブースや看板、オプションのラックや冷蔵ケースは設置していただいていて、我々はポスターや旗などディスプレイや商品の陳列をするだけで会場のセッティングが完了しました」とメリットを語る。

2017年の初出展に続き、2018年もインドネシア産タコの販路を着実に拡大し、3度目の出展となる2019年はインターネット販売大手の通販サイト、また大手コンビニエンスストアのPB(プライベートブランド)製品の製造など大手企業との取り引きがスタート。取引額も大幅に伸びたという。そしてインドネシア産タコの当社での年間輸入量は、2017年は15t、2018年は70t、2019年には150tと順調に数字を伸ばし、将来的には年間1,000tを目指していると語ってくれた。

株式会社あ印の写真

現地での原料調達&直輸入体制を整え、満を持して日本の販路開拓へ。

とんとん拍子に業績を伸ばしたかに見えるあ印だが、日本ではなじみのなかったインドネシア産タコの販路拡大の背景には、長年にわたって現地で入念に原料調達体制を構築してきた経緯があった。

「実は、中小機構さんとのおつきあいは中小企業総合展初出展より前の2014年から始まっているんです。当時弊社では、今後成長が見込めるインドネシア市場への輸出をしたいと、“F/S支援事業(※)”ヘ応募して採択され、中小機構さんと一緒に1年間基礎調査を行ったんですよ。海洋国家のインドネシアでは海産物はふんだんに獲れましたがタコを食べる習慣はなく、結果的に日本からの輸出は断念しました。ただ、現地調査の最終日に、中小機構の同行メンバーに、次のステップとしてインドネシア産タコを原料とした現地生産の可能性を見極めるために、JICA支援事業へチャレンジする手立てもありますよとアイデアをいただいたんですよ。帰国後早速、JICAの“普及・実証事業”に応募し、翌2015年に採択されました。インドネシアへの支援として、有効活用されていないタコの加工技術や衛生管理技術の支援を行い、現地とのパイプが生まれました。」と当時を振り返る。

(※)F/S支援事業:F/Sはフィージビリティ・スタディの略。海外事業化可能性調査。

当時からタコ加工業界では高騰し続けるアフリカ産タコに対して新たな輸入先が求められていた。インドネシア産のタコは皮が硬く、いくつかの企業が輸入を試みるも失敗に終わり、どこも手をつけたがらない状況にあったという。あ印も例に漏れず2012年に50tの輸入を試みたがやはり品質が悪く、完売するまで実に3年の時を要するという結果に終わっていた。

「苦い経験がありましたから、インドネシア産のタコを何とかものにしたいという思いがありました。タコを獲る島まで実際に行ってみると獲れたてのタコはとても質が良く、弊社独自の“うま味凝縮製法”で実際に蒸しダコをつくってみたらすごくおいしかったんですよ。原因はタコそのものではなく、現地での加工や輸送方法による鮮度の劣化にあったんです」
“普及・実証事業”の3年をかけて、葛貫氏は現地の漁師への捕獲指導、持続可能な漁獲のための環境調査、加工工場の設置や衛生管理技術指導などを行い、インドネシアからの輸出を可能にする基礎をつくった。その後、あ印の現地法人を立ち上げて日本への輸出に向けて準備を整えた。

「普及・実証事業でインドネシア産タコを直輸入できる目処は立ってきましたが、日本国内で実際に販売先を確保して流通させることができなければ、当然ビジネスとして成立せず、インドネシアと日本がwin-winの関係にはなりません。2017年中小企業総合展は、ビジネス展開させるために、日本市場の可能性を探る場として初出展したのです」

高騰するアフリカ産タコに対してインドネシア産タコは品質は同レベルながら価格は3割減。あ印のブースで配付された試食品は、一時期タコ離れしていた外食業界などの人々を惹きつけ、印象に残すことに成功した。この初年度の出展により、日本市場での可能性を確信したと葛貫さんは語る。そして翌2018年、2019年の出展によって販路を拡大した成果は冒頭の通りである。

葛貫賢治さんの写真

インドネシア漁民の所得向上を目指し、国際協力の新たな取り組みへ

「タコをはじめ水産品の原料調達は、商社が担うのが一般的です。実際にアフリカ産タコの仕入れは今でも商社から。今回のインドネシア産タコのように、現地で新たに原料調達や直輸入の環境を整えるには、当然ながら人員も時間もコストもかかりますから我々のような中小企業にとって自費で取り組むのは到底不可能。公的機関の支援策なくして今回のプロジェクトは実現し得ませんでした。2014年のF/S支援事業から、中小機構さんには一貫して支援してもらっています」

さらにF/S支援事業終了後も、葛貫さんは虎ノ門の中小機構本部へ何度も足を運び、都度アドバイスをもとに、外国語Webサイトの構築支援(F/S支援事業)などさまざまな支援策を活用したという。そして中小企業総合展への3度の出展など、中小機構の支援策を活かして成果を上げてきた。

株式会社あ印Webサイトの写真

「実は、この秋から次のステップへ向けてすでに新たな取り組みを始めています。JICAの“草の根技術協力事業”の地域活性化特別枠として、ひたちなか市の案が採択され実施団体として弊社も参加しています。事業内容は、インドネシア現地のタコ漁師などの収入向上と、そのためのフードバリューチェーンの構築です。国際協力の取り組みとして、ひたちなか市やインドネシア現地の政府系企業も一緒になって支援を行っています。インドネシア産タコの販路開拓に成功しても、肝心の原料を調達する現地の漁民たちと持続可能な関係性を築くことができなければ、長い目で見て継続することはできません。まずは、第一次生産者であるインドネシアの漁民の所得向上へ向けて動きだしています」

約60年前、西アフリカで漁獲されて冷凍輸入された真ダコのボイル加工をスタートし、販路を広げたのもあ印の先人たちだったという。インドネシア産タコのプロジェクトでは、中小企業総合展への出展だけにとどまらず、公的機関のサポートを積極的に活用しながら、産地の開拓から直輸入ルートの構築、日本市場での販路開拓を成功させたあ印。業界の新しいスタンダードを創造する同社の挑戦は、まだまだ止まるところを知らない。

葛貫賢治さんの写真

株式会社あ印の写真

[企業DATA]

株式会社あ印

本社住所
茨城県ひたちなか市沢メキ1110-9
代表取締役
鯉沼 勝久
事業内容
水産物加工・商品開発(たこ、いか他) / 原料の輸出入
URL
http://www.ajirushi.com
  • ナビゲーター : 中小機構 販路支援部 秋山 聡太郎
  • 取材・文 : スクーデリア 瀬上 昌子

過去開催実績

  • 中小企業総合展 in FOODEX 2019
  • 中小企業総合展 in FOODEX 2018
  • 中小企業総合展 in FOODEX 2017
  • 中小企業総合展 in FOODEX 2016
  • 中小企業総合展 in FOODEX 2015
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