成功事例

佐野製麺株式会社の専務執行役員 加賀延明さんの写真

「中小企業総合展 in FOODEX」
出展企業:成功事例
#006
真っ黒なオリジナル麺“海賊焼”で
来場者を引きつけ国内販路開拓に成功した
伊豆半島の老舗製麺メーカー。
麺づくりのエキスパートによる挑戦。
【佐野製麺株式会社】静岡

「佐野製麺」の出展事例に学ぶこと

東海道新幹線の三島駅から伊豆箱根鉄道駿豆線で修善寺まで30分強、さらに路線バスに揺られつつ、伊豆高原と駿河湾沿いにきらめく海を車窓に眺めながら1時間半ほどで辿り着く西伊豆は、夕陽が美しいことでも知られる観光スポット。今回訪れた静岡県西伊豆町の“佐野製麺株式会社”は、地元のホテルや学校などを主な取引先としていたが、中小企業総合展 in FOODEXをきっかけに全国に取引先を拡大した老舗製麺メーカーである。

イカスミや海藻、桜葉など伊豆の特色を生かした素材を練り込んだオリジナル製品の製造販売を行いながら、展示会出展などによって新たな販路の開拓、またOEM製品の受注など、数々の新たな試みを行ってきた専務執行役員の加賀延明さんに、中小企業総合展出展に至るプロセスとその成果についてインタビューした。

積極的な声掛け&実食で、大手企業へも直接アプローチ

2019年に100周年を迎えた佐野製麺が独自性の高い真っ黒な麺を開発したのは15年ほど前のこと。地元の観光ホテルから「真っ黒でインパクトのある麺を」というOEMのオファーだった。試行錯誤を繰り返しながら開発した真っ黒な麺は好評を博し、OEMの「ブラックラーメン」の他、オリジナルやきそば「海賊焼」を開発。2009年のふるさと祭「これぞ西伊豆食バトル」では「海賊焼」が見事優勝した。

県外への販路開拓を狙う加賀さんがまず試みたのは、静岡県の商工会連合会の支援事業によるFOODEX JAPAN 2009への出展だった。県のサポートによって当初は無料で出展することが叶い、販路拡大につながっていたのだが、参加企業枠の拡大とともに出展料が有料化、さらには年々出展料が高くなり、次第に大きな負担となっていった。

「そんなある年、知人に教えてもらったのが、『中小企業総合展 in FOODEX』だったんです。1コマ6万円台で出展できると聞いて早速申し込み、翌2017年は中小企業総合展の枠で出展しました」と加賀さん。他にはない真っ黒な麺は引きが強く、2017年は特に大きな手応えがあったという。
「大手卸売会社を通じて大きなレジャー施設のハロウィンメニューに期間限定で採用されたんですよ。実際に家族旅行を兼ねて現地へ視察に行きましたが、感慨深いものがありました。フードサービス系の来場者比率が高いFOODEXは、大手企業への販路開拓のチャンスもあって、何度出てもさらなる販路拡大を見込める展示会だと感じています」

海賊焼の写真

もちろん出展にあたってはスムーズな商談を行うための工夫も必要だと加賀さんは語る。
「業務用の『海賊焼』をメイン商材で展示しているのですが、ディスプレイは段ボールに製品を詰めて冷蔵ショーケースの中に展示しました。納品時の状況をイメージできることも決め手の一つですね。そして品質はもちろんですが最低ロットやリードタイムなど発注しやすい取引条件を整えておくことも大切です」

「もう一つ大事なことは、とにかく来場者に積極的に声を掛けてブースで足を止めてもらうこと。飲食店からホテル、スーパーマーケットまで、普段なかなか会えない大手企業の担当者に直接アプローチできるチャンスですから、道行く人々の胸元のネームホルダーの名刺に目を光らせて、すかさず声を掛けて試食を手渡すようにしています。大手リゾート施設の取締役に声を掛けて、実際に大きな取引に結びついたこともあるんですよ」
結果を出す出展者には、やはり商品の良さを伝えるPR力はもちろん、何としてもチャンスを掴むという積極性が備わっているようである。

海賊焼の写真

オリジナル麺の開発力アピールで、OEM委託製造も受注!

「展示会場で『海賊焼』の試食で足を止めていただいた方に欠かさずお伝えするのは、『御社の特色を生かしたオリジナル麺をOEMで特注できますよ』ということ。中小企業総合展出展の初年度に成約して『宇治抹茶そば』を作らせてもらった京都の製茶所とはその後もずっと取引が続いていて、現在も大きな売上を占めています。麺に練り込むものは地域や企業独自の素材を提供していただければオリジナル麺を作ることができるんですよ」と加賀さん。

「試作も自社工場で行なっていますから、OEMのオファーがあれば即試作してお届けしたり、送ったりすることが可能です。小ロットで対応できることをはじめ、リードタイムが短くできるスピード感も中小企業ならではの強みですね」

とはいえ、オリジナルの麺をすぐに試作できるのは、小回りのきく会社の規模感によるものだけではない。今から10年以上前、いずれ景気が悪くなる可能性を見越した加賀さんは、“1週間に1種類の新しい麺を開発する”という課題を自らに課して1年半もの間、多様な素材を使って試作を作り続けたのだ。日頃から職人としての技を鍛錬し続けてきたことが、どんなオファーにもすぐに応えられる開発力と自信に繋がった。

加賀延明さんの写真

海外の販路開拓へ期待

「2019年の中小企業総合展では、中国を対象に取引している商社からの引き合いがあって成約に繋がりました。今年は英文によるPRツールも用意して挑みましたね。手応えを感じた相手には、極力その場で気前良くサンプルを手渡すのもポイントです。FOODEXのような大きな展示会ではたくさんのブースを見て回るので、いかに記憶に残るか、覚えてもらうかが大切なんですよ。展示会終了後1週間以内にフォローの電話やメールをするのも大事ですね。そこで反応があれば、実際に足を運んで商談をしたり、OEMの試作を作って届けたり、とすぐに行動に移すことで実際の取引に繋げてきました」と加賀さん。

「これまで海外市場は足踏みしていましたが、今回は前金で取引可能であることを条件に海外の販路開拓へ一歩前進しました。今後は積極的に狙っていきたいと考えています。また、中小機構のアドバイザーさんからは専門家の観点から実践的な助言をいただきました。単独出展では得られないさまざまな情報を提供してもらえることも、中小企業総合展の枠で参加することのメリットだと感じています」

中小企業総合展への出展は、既存商品の流通拡大やオリジナル商品開発のチャンスを掴む場であると同時に、海外進出へ向けての情報収集や出展者同士のネットワークづくりなど、さまざまな側面で視野を広げ、企業としての発展を力強く後押ししてくれる絶好のステージでもあると言えそうである。

加賀延明さんの写真

佐野製麺株式会社の写真

[企業DATA]

佐野製麺株式会社

本社住所
静岡県賀茂郡西伊豆町仁科399-3
事業内容
麺類製造卸販売(生麺、乾麺、冷凍麺、その他小麦粉商品) / 業務用食品材料販売
URL
http://men-ya.com
  • ナビゲーター : 中小機構 販路支援部 秋山 聡太郎
  • 取材・文 : スクーデリア 瀬上 昌子

過去開催実績

  • 中小企業総合展 in FOODEX 2020
  • 中小企業総合展 in FOODEX 2019
  • 中小企業総合展 in FOODEX 2018
  • 中小企業総合展 in FOODEX 2017
  • 中小企業総合展 in FOODEX 2016
  • 中小企業総合展 in FOODEX 2015
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